かくしご
 大きな鳴き声で、
ふと顔を上げると長男が、泣き続けている信子を抱いていた。 

 慌ててぬれた手で信子を受け取り 
近所の外科に走った。
 
 大変な事になった。
夫になんて思われるだろう。
そのことばかりが気になった。
泣いている信子の身体は、火の玉のように熱かった。
顔を覗き込むと 何か所か血がにじんでいる。

 「先生! うちのこの顔に傷が残るでしょうか?
  なんとかしてください。」 

 先程まで考えていたこととは裏腹に 
外科の先生に涙を流しながら、懇願した。
そしてそのまま、公衆電話から、会社にいる信太郎に電話をした。
 
 「あなた。 ごめんなさい。」
と言っただけで、涙が出てきて言葉が出なかった。
< 41 / 47 >

この作品をシェア

pagetop