かくしご
 「みつ。」
そっと信太郎は、呼んでみた。

 「子供の運動会は、
おいしいお弁当を作ってくれるか?」
みつの返事はなかったが、信太郎は続けた。
 
 「青空の下、みんなで、
 大きなおにぎりを食べような。 
 おれも行くから。
 そして、その時は、友達にカメラを借りてくるから、
 『家族』の写真を撮ろうな。

 1年後、5年後、
 みんなで、写真を見ることを考えて、
 かっこいい姿を撮るぞ。」

 「そして、これからみつは、
 もっとおれに何でも話してくれ。
 悪いのはおれだから。」

 そんな声は、みつには、聞こえなかった。 
いや聞こえてはいたが、心まで届かない、
そんな放心した状態だった。

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