やくそく
やくそく
鈍く動く灰色の厚い雲から
太陽がさす気配はまったく見えず、
窓から見えるアスファルトは朝も夜も深い黒色のまま。
一週間ほど降り続く雨が、道路わきに小さな流れをいくつも作り出していた。
 
すっかり寒くなってきたというのに、
適当に押し込んでいるだけのクローゼットの中からコートを探すのが面倒くさくて、
ここ数日、組み合わせに迷いながらも最近買ったジャケットでどうにかやり過ごしていた。
さすがにこれ以上の組み合わせは考えられなくなり思いだした。

マフラーならコートより取り出しやすいところに置いたこと!

それからは夏前の記憶を手繰り寄せ、クローゼットの中の”自分が小物を入れそうなスペース”をあさる。
予想以上に積み上げられた洋服のカラフルなモザイクの中から、紺色のそれが目に付いた。

あなたがくれたマフラーの柔らかな手触り。
どうしてみるまで忘れていたのだろう。
今まで消えていた時間が避けられない速さで記憶の一部を胸の中央に押し込んできた。



ちらちらとまう かるいゆき
さむい冬に 息がつまるよ
捨てきれていないマフラーに 顔をうずめた

ちいさなことで二人笑いあった
黄色信号でアクセルを踏むことが合図
決まった 会話が始まりだす

退屈を知らない 時間
ひとつひとつ 繰り返し
今でもあたたかいきみの 笑顔に僕は・・・

何が一番だなんて 決めることはできなかったはずなのに
まっすぐ過ぎるぼくらは それぞれの一番いいカタチ 求めてしまう
出した答えが 正解か 今でもわからない

ぼくたちの道は ずれてしまったけれど、
別々のやり方できっと あの場所へ辿りつくよ
やくそくの場所へ いくよ
きみに伝えたい
ただ ただ あいしてる
< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

蝶々∞まりえ

総文字数/3,108

恋愛(その他)4ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop