『私も歩けばイケメンにあたる♪』
私と雅は、顔を見合わせて
駆け出した。
心さんと栞もやって来る。
『がんばって!』
『もうちょっと!』
『あ、魚が見えてきた!』
みんなの掛け声を背に、
あいつは、かなりの時間、
魚と格闘した。
魚は、何度もジャンプして、
釣られまいと、
抵抗している。
あいつも必死だ。
「おい、シーバスじゃないか?
清、負けんな!」
心さんも声を張り上げる。
そして、とうとう、
あいつは、魚を釣り上げた!
「すごい!!」
私は、
自分が釣ったわけでもないのに、
なんだか、
とても、
興奮してしまい、
“すごい!”
を連発してしまった。
雅も、さっきまでの顔とは、
うってかわり、
笑顔だ。
「ねね、これなんて魚?」
私は、興奮したまま、
あいつに聞いてみた。
下あごが上あごより出ていて、
なんだか、ひょうきんな顔を
している。
「お前、
こんなメジャーな魚を
知らねぇのか?
スズキっていうんだよ。
よく覚えとけ。」
いつもの、
あいつの嫌味な口調も、
なんだか、
楽しく聞こえた。
「うん!」
私が、
満面の笑顔で答えたせいか、
あいつは、
一瞬驚いた顔をしてから、
私に、釣った魚を手渡した。
「ほら、写真撮るから
しっかり持て!」