『私も歩けばイケメンにあたる♪』
あいつは、
慣れた手つきで魚を
さばいていく。
その横顔は、
真剣そのもので、
しなやかな手つきは、
すごくきれいで、
私は、
本気で
見とれてしまった。
腕まくりした両手から、
程よくついた筋肉がのぞいて、
あの腕に抱きしめられたんだと、
思い出すと、
--抱きしめられたといっても、
ちょっと、支えてもらったりしただけなのだが、--
急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
そういえば、
あいつとは、
出会いが悪かったせいで、
最初はあまり良い印象がなかったけど、
今、冷静にあいつを見てみると、
なるほど、
女子に騒がれるのが分かる。
一重なのに、大きくて、切れ長の瞳は、
薄い茶色をしていて、
人を吸い込んでしまいそうだ。
背が高いのに、
小さい顔をしているから、
八頭身以上ありそうだし、
なにより、
人を惹きつける、
オーラのようなものを
感じさせる。
特別な人間だけが放つ“光”。
“ひかり”
なんて、名前ばかりの私が、
決して、持ち合わせていないもの・・。