『私も歩けばイケメンにあたる♪』

自分でも、緊張したのがわかった。

でも、父に悟られたくなくて、
なるべく、普通を装った声を出した。


「うん。
そうみたい。

今、試しにって、
新しい家族と一緒に暮らしてる。」


一言一言つむぎながら、
私は、注意深く父の様子を観察した。

父の様子に、変化は見られなかった。


「そうか。
うまくやっていけそうか?」


うまく?

うまくいかなそうだと言ったら、
この人は、なんと答える気だろう。

答えは分かっていたはずなのに、
思わず、口をついて出てしまった。


「血の繋がってない人たちだからね。
難しいよ。」


父は、私から顔を背けると、
そうか、と言いながら、コーヒーカップを口に運んだ。


「まぁ、頑張れ。」


そのまま、無言になった。



やっぱり、言わなきゃ良かった。


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