『私も歩けばイケメンにあたる♪』
私が席を立つと、父は、何か言おうと、
口を開きかけたが、
私は、気づかないふりをして、
そのまま店を出た。
帰りの電車の中で、
私は、無性に自分に腹が立った。
父が、自分を引き取るつもりがないのは、
百も承知だ。
なのに、毎年毎年、父の顔を見ると、
今年は、去年とは違う展開になるのでは?
と淡い期待を抱いてしまう。
そして、
その期待が打ち砕かれると
軽い自己嫌悪に陥って、
何日も落ち込むことを繰り返す。
はあ~、と深いため息をついて、
外を眺めた。
次の駅で降りれば、すぐに家だ。
家に帰れば、
父と会ったことを、報告しなくてはいけない。
気づくと、降りるべき駅を通り過ぎ、
ほんの2ヶ月前まで、自分が住んでいた街で
電車を降りていた。