『私も歩けばイケメンにあたる♪』
突き飛ばされた私は、
太ももをすりむいてしまったけど、
痛みよりも恐怖の方が大きくて、
助けてくれたおじさんへのお礼もそこそこに、
駅へ向かって猛ダッシュした。
全身ががたがた震え、
券売機になかなかコインが入らない。
焦れば焦るほど、
うまくいかなくて、
泣きそうになっていると、
誰かの指が、私の指にそっと重なって、
お金が機械に吸い込まれていった。
その指は、いつも見慣れていて、
すごく長くて、器用な指で。
でもまさか、こんなところにいるはずがない。
確かめたいような、
確かめたくないような、
複雑な思いで、固まっていると、
「ほら、切符。
帰るぞ。」
低い声とともに、
私の頭が、ぽんと叩かれた。