『私も歩けばイケメンにあたる♪』
「なんだよ、その金。」
さっきとは、明らかに違う、
鋭い刃物のようなあいつの声。
「これは、その・・。」
正直に父からだと言うのは
ためらわれた。
きっと、水沼家の人々は、
快く思わないに違いない。
下手をすれば、再婚話に影響が出かねない。
けれど、とっさにうまい言い訳も思いつかず、
私は、言葉が出てこない。
私がもらうお小遣いの額でないことは、
明らかだ。
あいつは、冷たい表情をしたまま、
無言で私を見つめている。
私は、蛇に睨まれたかえるのように、
身じろぎもできず、
ただ震えていた。