『私も歩けばイケメンにあたる♪』
あいつの口からムードなんていう単語を
聞くと思っていなかったので、
思わず、プッと吹き出すと、
軽い舌打ちとともに、
さっさと来いよ、
と高飛車な言葉を残して、扉が閉まった。
30分後、
散々悩んだ挙句、
まつげをカールさせて、
少しグロスの入ったリップをぬっただけで、
家を出た。
髪の毛だけは、
あいつが褒めてくれたこともあり、
がんばって、巻いてみた。
家を出る時、
ちょうど、心さんも車で出かけるところだった。
「ひかりちゃん、
今日清とデートだって?
すごく、かわいいじゃん。
あいつ、きっと喜ぶよ。」
運転席から、私に声をかける心さんは、
当然のようにおしゃれな服をしていて、
負けじと、おしゃれしている栞の姿が
想像できる。
駅まで乗せてあげると言われて、
素直に従った。
だいぶ待たせて、
あいつ、怒ってるかな?