『私も歩けばイケメンにあたる♪』
栞の名前に、ハッとした。
そうだ。
栞は心さんの彼女なんだから、
私が車に乗ったりしたら、
嫌な気持ちになるよね。
そこまで考えて、
ふと、あいつのいらいらの原因に思い当たる。
「もしかして、
心さんに嫉妬してる?」
口にしたとたん、後悔した。
今度は、うぬぼれ女とか言われるに違いない。
でも、あいつの口から出たのは--、
「当たり前だろうが。
自分の好きな女が、他の男の車に乗ってんの見て
喜ぶ男がいるかよ。」
人形になったみたいに体が動かない。
私の体だけ、瞬間凍結してるみたいだ。
体は、凍ったように動かないのに、
なぜか、首から上だけが、
熱く感じて、瞬きもできない。
それに気づいたのかどうか、
動けない私の顔を、
ふ~ん、といいながら、
ニヤニヤ覗き込んだあいつは、
「へ~、結構かわいいじゃねぇか。
俺のために精一杯おしゃれしてきたわけ?」
などと言いながら、
私の髪の毛に、人指し指をくるくると巻きつけた。