『私も歩けばイケメンにあたる♪』
しばらく、がたがたとやっていると、
隣の部屋の住人が、顔を出した。
「あれ?倉本さんとこの・・。
どうしたの?」
「あ、おばさん、こんばんは。」
小さい頃から可愛がってもらったおばさんだ。
見慣れたお隣さんに、ほっとする。
部屋は合ってる。
けど、次のおばさんの言葉に、
私は、背中に水をかけられたような
気持ちになった。
「引越したんじゃなかったの?
少し前に、クリーニングの業者さんが入ってたから、
てっきりそうかと思って。
挨拶もなかったから、
どうしたのかと思ってたんだけど。」
「あの、鍵も交換してましたか?」
固まって声の出ない私に代わって、
清が聞いてくれた。
「さぁねぇ?
でも、売りに出すって言ってた気がするけどねぇ。」
「そうですか。
ありがとうございました。」
清は、おばさんにお辞儀をすると、
行くぞ、と私の手を握って、歩き始めた。
手をひかれた私は、
小さな子供のように、
のろのろと、歩を進めた。