『私も歩けばイケメンにあたる♪』
「今日暇なら、
駅前でお茶していかない?」
授業が終わるとともに、栞が、
人差し指を立てて、片目を瞑った。
「行く!」
私は、うれしくて、
間髪いれずに返事をした。
雅以外の人と、放課後に遊ぶのは久しぶりだ。
でも、その幸せ気分は、
あいつの低い声によって、
一瞬に崩壊した。
「おい、帰るぞ。
さっさと支度しろ。
それとも、新しい呼び名は、
のろま、
に決定か?」
見上げると、肩にかばんを背負った、
あいつの不機嫌そうな目が、私を睨んでいる。
「え?なんでいるの?」
いつの間に、私の教室に入ってきたのか、
という、素直な疑問が湧いてくる。
いや、それよりも、
『帰るぞ』
って一体・・・。
「今日から登下校は一緒と決まったろうが。」
私の不思議そうな顔を見て、
あいつのこめかみが、
ぴくん、
と動いた。
「え?
だって、おじさんから、
一緒に行きなさいとは言われたけど、
帰りは何も言われてないよ?
それに私、
今日は栞と遊びに行くし。」
冗談じゃない。
このままじゃ、家まで強制連行だ。
第一、栞の話から、
清の女子生徒がらみのトラブルの話を
わんさか聞かされた私は、
明日から
どうやったら一緒に登校しないですむか、
ということを必死に考えていたのに、
下校まで一緒だなんて、
トラブルにまきこまれなさい、
といっているようなものだ。
「おい!」
あいつが私の背中越しに叫んだが、
私は聞こえないふりをして、
栞と教室を後にした。
「いいの?」
栞は、心配そうに
あいつを振り返って聞いてきたが、
私は、栞の手を引いて、足早に歩いた。