『私も歩けばイケメンにあたる♪』

「今日暇なら、
駅前でお茶していかない?」


授業が終わるとともに、栞が、
人差し指を立てて、片目を瞑った。


「行く!」

私は、うれしくて、
間髪いれずに返事をした。

雅以外の人と、放課後に遊ぶのは久しぶりだ。


でも、その幸せ気分は、

あいつの低い声によって、
一瞬に崩壊した。


「おい、帰るぞ。
さっさと支度しろ。

それとも、新しい呼び名は、
のろま、
に決定か?」

見上げると、肩にかばんを背負った、
あいつの不機嫌そうな目が、私を睨んでいる。

「え?なんでいるの?」

いつの間に、私の教室に入ってきたのか、
という、素直な疑問が湧いてくる。

いや、それよりも、

『帰るぞ』

って一体・・・。


「今日から登下校は一緒と決まったろうが。」

私の不思議そうな顔を見て、
あいつのこめかみが、
ぴくん、
と動いた。

「え?
だって、おじさんから、
一緒に行きなさいとは言われたけど、
帰りは何も言われてないよ?

それに私、
今日は栞と遊びに行くし。」


冗談じゃない。
このままじゃ、家まで強制連行だ。

第一、栞の話から、
清の女子生徒がらみのトラブルの話を
わんさか聞かされた私は、
明日から

どうやったら一緒に登校しないですむか、

ということを必死に考えていたのに、

下校まで一緒だなんて、
トラブルにまきこまれなさい、
といっているようなものだ。


「おい!」

あいつが私の背中越しに叫んだが、
私は聞こえないふりをして、
栞と教室を後にした。

「いいの?」

栞は、心配そうに
あいつを振り返って聞いてきたが、
私は、栞の手を引いて、足早に歩いた。





< 39 / 462 >

この作品をシェア

pagetop