『私も歩けばイケメンにあたる♪』

「ちょっと、あんた!
栞に何言ったのよ!」

私は、椅子に腰掛けて、机を両手で叩いた。

さっき、思わず大きな声を出して、店内の客の注目を浴びてしまったので、
あいつに聞こえる程度に、声の大きさには配慮したつもりだ。

「別に?
今日から登下校は一緒になるから、
放課後、出歩くなら、俺にも連絡するようにって
言っただけだぜ?」


「な、なんで?
さっきも言ったけど、
私、帰りまで一緒になるつもりはないから!

朝だって、今日は、とりあえず、
お母さんとおじさんが、安心するっていうから、一緒に登校したけど、
ずっとこのままのつもりはないし!」


「確かに親父は、
一緒に行け、
って言っただけだけど、

それは、たんに、文言どおり
一緒に登校だけすりゃいい、
って意味じゃねえよ。」


「どういうこと?」


「親父が言いたいのは、
お前を危険なことから
“守れ”ってことだ。

それは、痴漢は当然として、
学校でも、変な虫がつかないようにしたり、
下校でも、襲われたりしないように気をつけろって意味でもある。

とにかく、お前が危険な目にあわないように、
見張るのが俺の役目だ。

だから、お前は、
明日からも
毎日俺と一緒にいるんだよ。

家から外出するときは、俺に知らせてからにしろ。
いいな?」


「で、でも、私は、」


「お前の意見なんか聞いてねぇんだよ。
拒否権なんかあるか。

大体、この俺が、
守ってやろうって言ってるんだ。

泣いて喜ぶべきなのに、拒否しやがって、何様だ?
まったく。

それとも、本当は、うれしくて仕方ないのに、
照れて素直になれないだけか?


ツンデレちゃん?」





< 44 / 462 >

この作品をシェア

pagetop