『私も歩けばイケメンにあたる♪』
“ツンデレちゃん”
を強調して、
あいつは、口の端を吊り上げて、
意地悪そうに、
いや、
面白そうに
笑っている。
その瞳は、ギラギラと怪しく輝いていて、
矛盾している気がするんだけど、
その輝きが、とても澄んで見えて、
なんていうか、
すごくきれいで・・、
私は、なんだか目が離せなかった。
こんな瞳・・・、
昔見たことがある。
近所に住みついていた、野良猫が、
獲物を前にした時に見せていた瞳だ。
ぎらぎらとした、切れ長の瞳の中で、
光彩が光ったかと思うと、
驚くべき速さで、獲物に飛び掛る。
その芸術的ともいえる、しなやかな肢体に、
私は、いつも目を奪われていた。
彼らは、
捕まえた獲物を、すぐには殺さない。
口にくわえて振ってみたり、
上に投げ上げたり、
木の上に引っ掛けたりして、
遊ぶのだ。
『守ってやる』
その言葉に一瞬鼓動が早くなったけど、
あいつは、私を、ねずみとでも思ってるに違いない。
あいつにとって、私は、
空腹を満たすためではなく、
お腹いっぱいのときに、与えられた、
新しいおもちゃに過ぎない。
けれど、
私は、あのギラギラとした瞳から
逃れられないんじゃないか、
そんな予感がした。
木に引っ掛けられた不幸な獲物は、
どんな景色を見ていたのだろう。