『私も歩けばイケメンにあたる♪』
たった今、別れたばかりなのに、
さっきまでの栞との会話は、ほとんど記憶にない。
あいつと栞が、同じ中学ということで、盛り上がり、
私は、
『ふ~ん』とか
『そうなんだ』とかの
相槌しか打ってないからかもしれない。
栞の中で、私は完全に
“清の彼女”
になってしまった。
誤解を解こうとするたび、
あいつが巧みな会話で
邪魔をしたため、
“照れている”
の一言で、片付けられてしまった。
しかも、帰り際、栞に
『照れなくても大丈夫だって!
それに、もし、清のファンに何かされても、
私が味方になってあげる!
だから、ちゃんと一緒に帰るんだよ?
明日も、一緒に来るんだよ?』
と、わざわざ念押しされてしまった。
『こいつが、恥ずかしがって、なかなか一緒に帰ってくれないから、
栞からも一言言ってやってくんない?』
なんて、あいつが、猫なで声をだしたからなのだが。
栞は、
私たちとは反対方向の電車に乗るため、
駅の改札で別れた。