『私も歩けばイケメンにあたる♪』
心さんの好意に甘えて、
栞を家まで送ってもらうと、
かなり遅い時刻になってしまった。
栞は、
反対方向だから、駅まででいいと遠慮したが、
心さんは、
『俺が送りたいから、送っていくんだよ~。
お友達にも、
“心さんは、優しい”、
って噂、
流しといてね!』
と冗談っぽく言いながら、回り道をしてくれた。
“おくってあげる”
じゃなくて、
“俺が送りたいから”。
相手に気を使わせない、
押し付けがましくない、
心さんの大人な対応に、
ますます好感度がアップした。
栞の目も、ハートマークが飛びまくり、
『彼女がいるか、探っといて!』
なんて、メールが入ってきた。
そういえば、栞は、あいつと同じ中学のはずなのに、
どうして駅から反対方向に行くんだろう。
直樹君だって、同じ駅から乗るのに。
ちょっとした疑問が湧いたが、
心さんに話しかけられて、
考えるのを中断した。
「ひかりちゃんは、
清とずいぶん仲良くなったみたいだね。」
一瞬、嫌味を言われたのかと
焦ったが、心さんはニコニコしている。
「はい?
あんなに毎日喧嘩してるの、
心さんも知ってるじゃないですか?
なんで、仲良いなんて、思うんですか?」
「あはは。
毎日全力で喧嘩してるからだよ。
あいつ、他人と距離を置く癖があるからさ、
関心のない人間には、表面上の付き合いしかしないんだ。
でも、ひかりちゃんには、
本心を見せてるだろ?
新しい家族ができても、うまくやっていけるか
心配したんだけど、安心したよ。」
心さんは、
バックミラー越しに、
私の顔を覗いて、
くすくすと、笑っている。