『私も歩けばイケメンにあたる♪』
「やっと、元に戻ったな。
そのほうが、
お前らしくて、かわいいぜ?」
私の罵倒に、
文句も言わず、
フフン、
と上から目線で、
あいつは笑う。
相変わらず、嫌味な笑顔を浮かべているのに、
なぜか、それを、
とても魅力的に感じてしまう。
『お前らしくて』
『かわいい』
さらっと
口にした、
そのセリフは、
あいつにとっては、
深い意味がないと分かっている。
でも、きっと今、私の顔は、
恥ずかしさと嬉しさで、
梅干のように、
真っ赤で、しわしわの
情けない顔をしているんだろう。
あいつは、
そんな私を見て、
プッ、
と噴き出しながら、
手を離してくれた。
部屋を半分出たところで、
あいつは、
思い出したように、付け足した。
「今度から、また学校の帰りは、
迎えに行くからな。
あ、それと、
今日、この後、すぐ出かけるからな。
6時には家を出られるように
準備しとけよ。」
私の返事も聞かずに、
あいつは、扉を閉めた。