桜涙
「あの…あなたは…。」
「ねぇ、何やってるの?」
…私の話聞いてないよ。
心の中で軽く突っ込みをいれた。
少年はいまだにニコニコしている。
「……桜の木を見てたの。」
「ふーん…。」
私は仕方なく答えたが、少年は特に興味も無さそうに言った。
だったら初めから聞かなきゃいいのに。
「この桜好きなの?」
少年はまたもや唐突に聞いてきた。
「………そうだけど。」
「ふーん。」
また同じ言い方。
いい加減にしてほしい。
それ以前に、一体この少年は何者なのだろうか。
「あのね、自分の名前も名乗らずに…!」
「僕はこの桜嫌い。」
またも無視された。
なんかもういいや。
否、本当は少年の言い方に動揺したのかもしれない。
それは、あまりにも冷たく棘がありすぎたから。