桜涙
「あの…。」
私は控えめに口を開いた。
「あっなんかごめんね!僕の名前は、如月巴那!ハナって読んでくれていいよ!」
少年はニコニコしながら言った。
「ハナくんって…変わった名前…。」
「巴っていう字に那覇の那でハナって読むんだよ!」
少年―――ハナくんは、へにゃりと笑いながら言った。
本当に不思議な少年だ。
「へぇ…そうなんだ。」
「今度は君が名前言う番だよ!」
なんかもの凄く理不尽な気がするんですけど。
まぁ、いっか。
「岡崎柚恵…です。」
「ユエちゃんか~可愛い名前だね―!」
可愛いとか、そんなこと初めて言われた気がする。
「ありがとうございます…。」
「あぁ!もうこんな時間!じゃあ、ユエちゃんまたね!」
「え!?あっ、さっさようなら。」
私が驚いている間もなく、少年は風のように去っていった。
「いったい…なんなの…ハナくんって…。」
私は呆れた表情で、ハナくんの去った後を見ていた。