The Last Lie
麗のいる左に向いていた私が正面に向き直ると 目の前にはよく知った顔。
『香汰くん、おはよ』
『おはよ、これから食堂行くんだ?』
私が頷くと軽く微笑む。
香汰(こうた)くん、柚杞の友達で同じ高校二年生。
薄茶の軟らかそうな髪は軽くワックスでクセづけされている。柚杞程ではないがわりと高い身長に似合わずくっきりした二重まぶた。ふんわりと笑われると、どうしようもなく癒される。
『香汰くん…パン、買いすぎじゃない?』
香汰くんの両腕にはたくさんのパン、そして手元のビニールふくろにはからあげのパックが入ってる。
私の質問に香汰君は苦笑した。
『ああ、これ柚杞の分も入ってるから』
『そーなの?柚杞は?』
『あいつは…』
『樺乃、窓見てみ?』
香汰くんとの会話を遮って、窓に寄りかかっていた麗が私に指示を出す。
何事か、と麗に視線を向けると麗は窓を開けてその向こうの裏庭を見てる。
なんとなく分かる。
だって今は11月の終わり、もうクリスマスだってすぐそこに来てる。
『相手はー?』
一歩近づきながら聞くと麗は視線もそのままに『一年、かなぁ』と答えた。
私が窓から下を覗いた瞬間、私の後ろで香汰くんがため息をついた。
ああ、バレちゃったって感じで。