The Last Lie

予想した通り、私の視界に入ったのは柚杞だった。

柚杞の向かいには確かに一年生と思われる女の子。

二人の間は約2メートル。

普段あまり(というか全く)話せない柚杞が近距離にいるとあって女の子は俯き加減で緊張してる様子。

緩く巻いた髪。色白の肌。決して濃い訳じゃないけど綺麗に化粧した顔。

きっと今日この時の為に一生懸命身なりを整えてきたんだろう。

小柄で控えめなタイプに見えるその子は女から見ても可愛いと思う。


『言ったあとかな?』

『ううん、まだ』


食堂のあるこの階は3階。
多分耳を澄ませば聞こえるだろう。

あの子の小さな声が。


『好き、です。伊川先輩』


うん、やっぱり声も可愛いな。
…割とハスキーな私には絶対に出せない声。

だけど、


『………』


そんな声にも柚杞は何一つ反応しない。
なんとなくあの雰囲気からして『だから?』って聞きたいんだと思う。

両手をズボンのポケットに入れたまま、うんともすんとも言わない柚杞に女の子は不安そうに視線をやる。

そりゃそうよね、多分彼女の告白はもう終わった。
普通今は柚杞が口を開く番なんだけど、

『…………』

やっぱり柚杞は何も言わない。むしろもう帰りますオーラしかない。
オロオロとする女の子に痺れを切らした柚杞はため息混じりにやっと口を開いて…


『話、終わり?』


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