The Last Lie
『今度のテストの時英語教えてもらおうかなー、それに…』
『樺乃ちゃん』
特に大声を出された訳でも怒鳴られた訳でもない。
でも、適当に本棚を漁る私の手を掴んだ五十嵐君の手と、
やけに響く低い声が、私の動きを止めた。
五十嵐君は、多分今怒ってる。そんな空気が出てる。
『言ったよね?別れるならもう踏み込まない方がいいって』
言われた。
『覚えてるよね?』
この前この図書室で五十嵐君は“どうするの?”と聞いてきた。
何を?なんて聞き返さなくても分かった。
五十嵐君には2ヶ月前、柚杞が私に嘘をついた時に話していたから。
“記念日までに、別れる”
『…五十嵐く、』
私の手を取った彼の手はなんだか温かくて、柚杞の手とは違うのに、