The Last Lie
呼び出されても行かない…ってどんだけよ!
せめて話聞く位はしてあげて欲しい。

麗は完璧呆れたらしく、眉間に皺を寄せて香汰くんに尋ねる。

『行かない、って相手はずっと待ってる訳でしょ?』

『うん、中には次の日も諦めずに来る子もいるね』

『次の日も?』

『たまにね』

『そういう場合は聞いてあげるの?』

『んー大抵は柚杞がその場でうまく逃げる』

『逃げる!?』


思わず口を挟んだ。

だって、逃げるって!いいじゃない聞いてあげれば!減るもんじゃないし!! しかも柚杞の場合は逃げるって言うより、

『うまくかわすんだよね。あいつ、呼ばれそうになるとそれを察知してどっか行っちゃうから』

超能力あるんじゃない?

って香汰くんはふんわりと笑った。


『なんか伊川くんて本当にクールよね。大人振ってるって訳じゃなくて。普通にタメには見えないよ』

まだ窓の下に目を向けたまま麗が言う。
窓の下にもうあの女の子の姿は無かった。
さっきの態度も確かに柚杞らしい。何を言われても冷静で、いつも余裕綽々で、たまに一人で焦ってる自分が惨めになる。

『…大人?』

香汰くんが似合わない素っ頓狂な声を出した。

『大人、って…誰?柚杞?まさか樺乃ちゃんもそう思ってる?』

珍しく少し早口な香汰くん何か可笑しいのか口元が緩んでる。

普段割とおっとりした感じの香汰くんが見せる意外な姿にぽかんとしつつ、頷くと、

香汰くんはついに吹き出した。

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