The Last Lie
『柚杞?』
『……』
呼び掛けても柚杞は振り向かない。足も止めない。
『ねぇ、』
『なに』
『柚杞…別れよっか』
強い風が吹いた。
耳元で風の音が響く。
立ち止まって、振り向いた柚杞の髪が風に揺れた。
風が止んで音が消えて、
静かな空気の中に、
私はもう一度、ゆっくりと言葉を響かせた。
音もなく、二人の影は途切れていく。繋ぐ細い線がゆっくりと離れた。
緩んだ柚杞の大きな手から
手を放したのは、私のほうでした。
『別れよっか…』