The Last Lie


『柚杞?』


『……』


呼び掛けても柚杞は振り向かない。足も止めない。


『ねぇ、』


『なに』









『柚杞…別れよっか』








強い風が吹いた。



耳元で風の音が響く。




立ち止まって、振り向いた柚杞の髪が風に揺れた。







風が止んで音が消えて、





静かな空気の中に、


私はもう一度、ゆっくりと言葉を響かせた。









音もなく、二人の影は途切れていく。繋ぐ細い線がゆっくりと離れた。



緩んだ柚杞の大きな手から







手を放したのは、私のほうでした。





『別れよっか…』



< 146 / 357 >

この作品をシェア

pagetop