The Last Lie
ゆっくりと後ろに振り向くと、数メートル先から柚杞が歩いてきていた。
ポケットに突っ込んだ両手を片方出して、私の正面まで来ると、
『なに笑ってんだよ』
その手で私の肩にあった香汰くんの腕を外した。
心なしかいつもより声が低い気がするけど。
…機嫌悪い?
でも香汰くんはそんなの全然気にしてないって感じで『柚杞の噂してた』と笑い柚杞の機嫌を逆なでする。
そんな柚杞は機嫌悪そうなまま私に視線を移すと『何話してたんだ?』って首を傾げた。
『大人だねって』
『大人?』
『柚杞の事。でもそう言ったら香汰くんが笑うんだもん』
『………』
『ね、私香汰くんの笑いのツボ分かんないんだけど』
『…樺乃は知らないでいい』
額に手をあててため息混じりにそう言って私の頭をポン、と叩いた。