The Last Lie

軽く撫でられただけなのにどうしようもなく胸がしめつけられる。

あっという間にポケットに戻っていく大きな手が、もう恋しい。


『香汰、樺乃に余計な事言うな』

『ごめん、樺乃ちゃん可愛いからつい』

『…お前な、』


さっきの冷たい柚杞を見たあとだから、余計に嬉しくなる。柚杞の彼女なんだと実感できるから。

だけど言い合う二人の周りを見てやっぱり少し複雑な気持ちになるんだ。


<あっ伊川先輩だー>
<近くで見たのはじめて>
<カッコイイー>


すれ違いざまに聞こえるいくつもの声。


中には周りが騒ぐから一緒に騒いでるだけって子もいるだろうけど、


<付き合ってほしー>

<彼女になりたい>


この中で本気で柚杞を好きな子はどれくらいいるんだろう。



< 17 / 357 >

この作品をシェア

pagetop