The Last Lie
心臓に悪い、五十嵐くんの真面目な空気…和んでなんか全然ない。視線を斜めに降ろすと、本棚を見てた五十嵐くんの目は真っ直ぐ私に向けられてる。
欲しがって…って、何を?
『…もっと甘えてよ』
『甘…?』
『樺乃ちゃん、』
これ以上聞くべきじゃないって、警告音がする。
戻れなくなっちゃうよって言われてる気がする。
…今度こそ逃げられないよって。
『俺、今まで女の子に関して“欲しい”って思ったことないんだよね』
『……』
『お互い欲望吐き出す為のもんだって思ってて相手とかこだわんなくてさ』
『……』
『まぁ“俺”を欲しがるようになる子もいたけど、そうなったら全部切ってた…樺乃ちゃんが見た時みたいに』
あの時の、冷たい目。
あの目はあの子に対してって訳じゃない…相手が誰だとも五十嵐くんは認識してなかったんだ。