The Last Lie

頷いた私の肩口で、五十嵐くんが笑って、ほっとしたように背中に回されてた腕の力が抜けたのがわかる。


この人を好きになれたなら



どれだけ幸せだろうと思った。





柚杞のじゃなくて、この手を取っていたなら



こんなに傷つかずに済んだのかな。



あんな嘘つかなくて済んだのかな。



“…隣で笑ってる「彼女の樺乃ちゃん」が、すっげぇ印象に残ってた”





私と柚杞の出会いが、2人で一緒に過ごした日々が、


五十嵐くんと2人でいる今に繋げるためのものだったなんて…



どうしたって思いたくはないけど…



変わるのかもしれない。




通過点にしかすぎないんだと、思えるようになるのかもしれない。



柚杞の声じゃなく


柚杞の手じゃなく


柚杞の体温じゃなく




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