The Last Lie
これで最後
あっという間に時間は過ぎて6時間目の終了を告げるベルが響く。
『じゃーここまで、下の練習問題やっとけよー』
白髪混じりの頭を掻きながら、教室をでていく数学教師のとう爺…もとい斎藤先生。斎藤の籐をとって、とうじい。私のクラスの担任だ。
『樺乃、』
帰りの支度をしている私を麗が呼んだ。
麗の眉間の皺は昼休みの時より一層深くなっていて、
『伊川くんと、本当になんにも無いんだよね?』
その口から出たのは私を気遣う言葉だった。
麗が聞いてるのは、さっき私が涙ぐんでいた理由が<周りにいた子>にじゃなく<柚杞>にあるんじゃないの?って事だ。
きっと私の性格上、そんな陰口をちょっと言われた位じゃへこむ訳ないとわかってるんだろう。それに最近柚杞と何かあったんじゃないかと麗は心配してくれていたし。
『何も無いって。今日だって柚杞ん家行くんだよ?』
『…そーだけど、』
『麗は心配しすぎー、私がボーっとしてるのは最近本読んで夜更かししてるせいだって言ったでしょ?』
『うん…でもなんか、やっぱり変じゃない?だいたい樺乃が本読むこと事態ー…』
『ほら、お前ら席つけー』
麗が少し声を荒げた時、とう爺がのんびりと教室に入ってきた。
『大丈夫だって、ね?とう爺来たよ、席戻ろ』
ニッコリと笑った私と、とう爺とを見比べて、渋々といった感じで席に戻っていく麗を見ながら、早く言わなきゃ駄目だと思った。これ以上麗に心配かける訳にはいかないと思った。