The Last Lie

覗き込んでみると笑っている香汰くんと背を向けた柚杞が話していた。
革靴を履いてるところをみると、どうも呼び止められたらしい。


『ちゃんと言えばいいのに』


香汰くんは柚杞の背中で私が見えてないのか、会話を続行する。


『あいつ絶対謝るから』

『確かに。樺乃ちゃんショック受けかねないし』


って…私の、話?


『泣かれたら困る』

『だから言わないの?』

『樺乃が知る必要ない』


何を?


『時間経つ程言いにくくなるのに…こんなのに捕まって樺乃ちゃん可哀想』


可哀想って、なにが?



『俺が捕まえた訳じゃねぇ


…樺乃が寄って来んだよ』



心臓が、ドクリと音を立てて、喉の奥が焼けるように熱くなって苦しくなった。



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