The Last Lie
《…うん、駄目》
そんな急用って一体なに?
思わず携帯を耳に強く押しあてる。
《…あのさ、》
ガヤガヤした雑音が遠退いて、五十嵐くんの声がさっきよりハッキリ聞こえる。
きっとベランダにでも出たんだろう。
引き戸を閉める音がする。
《…俺さ、樺乃ちゃんに頼みがあんだよね》
いつもより少し低い声で話し出した五十嵐くん。
…頼み?
『なに?図書委員の雑用でも頼まれた?そんなの、全然手伝うよ?』
頼みって言ったらそれしか浮かばない。
大真面目な私の発言に五十嵐くんは笑った。
《本当に?じゃあ今度委員会で頼まれたらやってもらおうかな、
…でも、今お願いしたいのはそんなんじゃなくて、長期戦になりそうな事なんだけど…頼まれてくれる?》