The Last Lie
ホームルームどころじゃなかった。
廊下を早足で歩きながら、さっきの電話の内容を思い出す。
五十嵐くんはいつもより少し低い声で、いつも通りの口調で言った。
《…諦めさせて欲しいんだよね》
“…何を?”
《樺乃ちゃんを》
出だしからよく分かんない五十嵐くんの“頼み”に困惑の声を漏らした私に、
“はい!?…意味不明なんだけど?”
それでも五十嵐くんは淡々と話を続け、
《あと樺乃ちゃんには謝んなきゃ…》
ー…ごめんね?、と謝ってくる。
すっかり話が見えなくなった私は携帯の向こうの五十嵐くんの声を、せめて聞き逃さないように黙るしかなかった。