The Last Lie

出窓から少し冷たい風が入ってくる。


誰が開けたんだろ…。


揺らされる緑色のカーテンは閉じられたまま、すっかり春仕様になった陽射しを遮っている。

わずかな隙間から漏れる陽だけを見てるともう春みたいだ。


薄手のカーテンを片側引っ張って開ける。

静かなこの部屋では、風や車の音、遠くから聞こえる帰りだした生徒達の声さえも届く。

決して透明では無い窓ガラスを閉め、年末に掃除くらいしておけば良かった、と思う。


出窓に置かれた真っ黒のクッション。

五十嵐くんの特等席。


今日、この後、またここに座ってくれるだろうか。


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