The Last Lie

解かれる


ずっと会いたくて仕方なかった人が目の前にいる。

だけど私は沸き上がる嬉しさも込み上げる涙も押さえ込んで冷ややかな声を出した。


『…なに?本でも読みに来たの?』


そんな訳無いのは分かってる。こんな状況どう考えたって五十嵐くんの“いじわる”でしかない。

柚杞がわざわざここに来る理由なんてないんだから。

だけど私があえてそんな事を言ったのは、もう私たちの関係が終わってるって事を自覚するためだった。


二人の間の沈黙が、最後の会話を思い出させる。あの沈黙のデジャヴ。


『…五十嵐に、言われた』

違うのは今目の前にいる彼の目に、あの時のような動揺なんてものは微塵もないってことだけ。



< 283 / 357 >

この作品をシェア

pagetop