The Last Lie

“俺でもない”?

手の中の鍵。ヒヤリと冷たいそれと、落とされた柚杞の言葉。

それらに戸惑う暇もなく、目の前まで距離を詰めてきた柚杞は、


『言えよ、どうする』


返事を急かしてくる。

久しぶりに縮められた距離に、一歩後退りそうになって堪える。ここで下がったら強がった仮面が外れる気がした。そしたら私が嘘を吐いた意味が無い、


『…話すってなに?私と柚杞に話すことなくない?』


…そんなのは嫌。
嫌な女と思われたって構わない。柚杞と関わる訳にはいかない。

五十嵐くんに甘えた時点でそんな選択肢は無い。そんな無神経な事は出来ない。


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