The Last Lie
それ以前に、柚杞が私を想ってくれてたのが事実だったとしても、柚杞の中に楓さんがいるのは確か。
鍵の掛けられたこんな密室で話すことなんて無い。
そこまで考えて見下ろしてくる柚杞に努めて明るく振る舞ってみせる。
『柚杞がなんて呼び出されたのかはわかんないけど、私は五十嵐くんと約束してたんだよ?』
本当の気持ちはあの別れた日に沈めたの。手の届かないくらい奥に。もう取り戻すことも出来ないように。
だから、私を見る柚杞の目に、熱く苦しくなる胸の痛みもきっと気のせい。
今まで通り、笑顔を向けて切り抜けようとする私に、
『柚杞が来るなんて知らなかったから来たの』
『……』
『知ってたら来たりしな…ー』
『五十嵐と付き合う訳?』
柚杞は刺のある声を出した。