The Last Lie

私が明るい声でそう言っても柚杞は黙ったまま、私を見てた。

一年も付き合ってる“彼女”の笑顔の違いもわからないくせに、真剣な表情で“寄って来る女”の心配したりする。

わかんないよ、柚杞。
どっちが本当?何が本当?
こんな近くにいるのに、柚杞が全然見えない。


柚杞は立ち上がりながら

『…なら、いいけど』

そう言って、クローゼットを開いて着替え始める。
その声も口調もいつも通りの柚杞に戻ってた。

この数十秒で何があったかは分からないけど、泣いた理由がばれないならそんなのどうでもよかった。

部屋着に着替えた柚杞の背中に『心配してくれてありがと』と声を掛けたら、

『無い頭で考えんなよ』

と、いつものトーンで返された。


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