The Last Lie
『柚杞が好きだから、別れようと思った。
嘘を吐いてでも離れなきゃいけないって思った』
どんなにカッコ悪くても、支離滅裂な言葉しか出なくても、
『楓さんを知って、柚杞を好きな沢山の女の子と、私は変わらないと思った。
…都合の良い“代わり”にもなれないって思った』
閉じた気持ちを取り出して
今度こそ、思い出にする。
『柚杞じゃないなんて嘘吐いた。
…柚杞は違っても、私は柚杞じゃなきゃ無理なの』
解けた心の行方なんて知らない。
それでも、
捕まれていた腕から離れていく大きな手が、肩に回されて、グッと引き寄せられた時、
『…馬鹿か、お前』
囁かれたその低く甘い声。
もう理由なんてなく、
ただこの人が好きだと、
強く思ったの。