The Last Lie
“それでも”
誰も居ない図書室で柚杞は私を抱き締めたまま、ちょっとの間動かなかった。
柚杞を伺いながら顔をあげようとすれば、頭を胸元に抑えつけられた。
『…柚、杞?』痛いくらいに強く抱き締めてくる柚杞を呼ぶと、ようやく柚杞は身体を少し離して、私の顔を覗きこむ。
久しぶりに味わう柚杞の感覚。
腰に回された腕、私の頬を包む大きな手。
目元に唇を寄せてきたと思ったら、舌が涙の跡をなぞる。
その熱さにビクッと肩を震わせた私を安心させるように頭を撫でて、
『樺乃、』
私の名前を呼ぶ。
呼んで離れていく柚杞はさっきまで座ってたソファーにまた腰を降ろした。