The Last Lie

紅茶を取ろうとして手を伸ばしたら、テーブルの真ん中に置かれた柚杞の携帯が視界に映った。

黒のシンプルな携帯。

……思い出してしまう。



“柚杞…?”



あの声を、聞こえた声を。


また喉の奥が痛くなって、ただのお湯にしか思えなくなったカップの中身をゆっくり飲み込んだとき。

ふいに後ろで雑誌を閉じるような音がした。


『樺乃』


名前を呼ばれ、反射的に顔を後ろに向けようとした瞬間ー…

『…んッ』

大きな手に引き寄せられて、唇を塞がれた。

びっくりして思わず後ろに身を引こうとしても、後頭部の手と、いつの間にか腰に回った手がそれを許してくれない。

いきなり何で?
どこでスイッチ入ったの?

私の中で動く柚杞の舌。
口内で舌を絡めとられ、吸い上げられて…それだけでもう苦しくて、熱くてどうしようもないのに、


『柚、杞…待っ…』

『まだ』

『ふぅ…っ…』


柚杞は乱れる私の呼吸ごとまた唇を塞いだ。



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