The Last Lie

どうやら柚杞の不機嫌の原因がわからないのは私だけらしい。

『…こりゃ、伊川君も気が気じゃないわ…大変ね?』

『…ああ』

『ギリギリ首繋がってる感じだしね?早く切られちゃえば…ー』

『香汰、お前早く片付け行け』

感じ悪く無理やり言葉を遮った柚杞に『はいはい』と爆笑しながら離れていく香汰くん。その姿が返却口の人混みに紛れたとき。


『樺乃?』


さっきとは180度違う穏やかな声が私を呼ぶ。


『なに?』


横に立つ柚杞を見上げるとその声と同じ穏やかな表情が目に入り、


『おはよ』


大きな手が私の頭をクシャッ撫でてくる。


< 332 / 357 >

この作品をシェア

pagetop