The Last Lie
どうやら柚杞の不機嫌の原因がわからないのは私だけらしい。
『…こりゃ、伊川君も気が気じゃないわ…大変ね?』
『…ああ』
『ギリギリ首繋がってる感じだしね?早く切られちゃえば…ー』
『香汰、お前早く片付け行け』
感じ悪く無理やり言葉を遮った柚杞に『はいはい』と爆笑しながら離れていく香汰くん。その姿が返却口の人混みに紛れたとき。
『樺乃?』
さっきとは180度違う穏やかな声が私を呼ぶ。
『なに?』
横に立つ柚杞を見上げるとその声と同じ穏やかな表情が目に入り、
『おはよ』
大きな手が私の頭をクシャッ撫でてくる。