The Last Lie
放課後、この場所に行くのは3年になって初めてだった。
相変わらず薄暗い廊下を歩きながら、見えてきた一階の端っこ。
そこだけ透明の壁が出来てるみたいに、いつも静かなこの場所が無かったら私はいまこうしてこんな決意を胸に秘めて、彼に会いに来ることもなかったかもしれない。
それ以前に、彼と知り合うことも話すこともなかったかもしれない。
扉の前でひとつ深呼吸してから戸に手をかける。
『力みすぎでしょ』
意を決して扉を開けようとした私の後ろで彼の声がした。
ちょっと私を馬鹿にするような、優しい声。