The Last Lie

誰だよ…って声の方に目をやると、


伊川、柚杞…?
なにしてんの…?

雨の中傘もささず、かといって自転車置場の屋根の下にも行かずに柚杞は立ってた。

携帯片手に反対の手はポケット、その長身を柱に預けて。

濡れていく少し長めの黒髪も、濃紺のブレザーも、柚杞は何にも気にしてなさそうだった。
いや、雨が降ってることすら頭にないのかもしれなかった。

それ程あの電話に集中してたんだと思う。

後ろ姿だけど少し見える横顔はなんだか切なかったのを覚えてる。


私と柚杞は同じ中学出身だった。


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