The Last Lie

私は柚杞の表情と電話を気にしながらも、バレない内に逃げようと思った。
聞いてたのがバレたら殺されそうだし。

『だからそうじゃねぇよ』

見た目どおり冷静な口調。なんか相手と食い違ってるっぽい。大事な電話かな?と思いつつ、音を立てないように、列から愛車を抜き出しつつー…

『俺が馬鹿だった』

やっぱりしっかり聞き耳はたててた。
どうも普通って感じじゃない会話につい野次馬精神が先にでてた。

『…カエデ、…も分か…っ…だろ?』


カエデ?女の子?

風と雨音が邪魔して聞きにくい。

…もしかして彼女ー…




ガシャンッ






聞こえにくさから私が思わず耳を寄せたのと、自転車がドミノ倒しのように倒れてく音がしたのは、ほぼ同時だった。



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