The Last Lie

携帯と一緒にベッドに倒れこむ。

クリーム色のベッドシーツからはさっきまで私が感じていた柚杞の香りは全然しない。私の洗い立ての髪からシャンプーの香りが少し鼻をかすめるだけ。

目を閉じると浮かぶ。
柚杞の部屋の黒いベッド。
シーツをかぶると柚杞の匂いに包まれる。
香水のほのかな香りと、柚杞の匂い。

私の大好きな香り。
どうしようもなく安心する香り。

すぐ横には眠る柚杞がいて私の腰に片手を回してる。

いつもの大人びた顔とは違う、少し幼さの残る寝顔。

今日、全部味わってきた。

柚杞の寝顔や意地悪な顔、優しい顔。

柚杞の熱、大きな手も身体の重みも。


本当に、これで十分。


思い出だけで、もう十分。


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