The Last Lie

『樺乃』

低い声が私を呼ぶ。

ページの進められない雑誌を取り上げられ顔を上げれば、いつの間にか柚杞が隣に座っていた。


なに?


そう聞こうとして口を開いたけど何も言えなかった。

柚杞に抱き締められたから。

首筋に柚杞の唇が押しあてられれば、

『ゆ、柚杞っ?ちょっと待っ…』

いくら鈍くても、これからどうなるか分からない訳じゃない。

困惑したまま柚杞の肩を掴めば私の声に柚杞は一度止まり、離した唇を耳元に寄せた。

残酷な彼は唇を耳にくっつけたまま、囁くんだ。


『樺乃、…いや?』



その甘い低い声で。




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