The Last Lie
『“柚杞を解ってやって”……ちょっと前、俺がよく言ってたけど覚えてる?』
小さく頷く。
2ヶ月前まで、香汰くんは口癖のように会うたびに私にそう聞いた。
心配そうな眼で。
いまみたいな表情で。
それが楓さんを忘れられない柚杞への、付き合ってる私への、精一杯のフォローだったんだと、気付いたのは今年の夏の“あの電話”の後でだった。
『柚杞と別れて欲しくなかったからなんだけど…無意識に樺乃ちゃんのプレッシャーになってた』
『………』
『…そんな顔しないで?樺乃ちゃんが悪いんじゃないんだからさ?』
優しい香汰くんが滲んだ視界の中で微笑む。
私は涙を溢さないように歯を食いしばって、ただ首を横に降った。