The Last Lie
香汰くんは苦い顔をして振り向いた。でもすぐに私から視線を外して空を見上げた。
『…樺乃ちゃんは、特別な感情ってすぐ消えると思う?』
『特別な感情?』
『たとえば柚杞と別れて、誰かと付き合ったとしても、簡単に柚杞を忘れられないでしょ?』
確かに、と思う。
そんな気持ちだったら今こんなに辛くない。
ーー…って、
『じゃあ、楓さんは柚杞のこと…』
『うん、でもちょっと違うかな…楓さんは柚杞をちゃんと好きだったから』
『え…?』
『好きだから…柚杞を好きになる程、自分が先輩を忘れきれなくて柚杞を傷つけるのが辛かったんだよ』
『……』
『…柚杞は柚杞で、自分と居ることが楓さんを苦しめてるって悩んで…ー』