鬼畜な俺様執事


岡谷さんは、掴んでいた私の腕をようやく放した。



「……いやにアッサリと引き下がりましたね」



そんな岡谷さんの呟きに、私は逆上した。



「どうして邪魔するの!?」



荒げた声にも、岡谷さんは落ち着いて対応してくる。



「私は自分の仕事をしたまでです」



その言葉が余計に苛立たしい。



「仕事仕事って……

あなたには人の心がないの!?」



あっ……と思った。



一瞬だけ、岡谷さんの心が傾(カシ)いだ。



少し悲しそうな、苦しそうな顔をして……



「帰りましょう」

とポツリと言った。


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